バスやトラックを中心としたクリーンディーゼル車に搭載されている「尿素SCRシステム」は、ディーゼルエンジンが排出するガスを尿素水で浄化する新技術です。
そんな尿素SCRシステムに必要不可欠なのが、専用の高品位尿素水「アドブルー(AdBlue)」。
アドブルーは定期的な補充が必要で、不足するとエンジンがかからなくなるほどクリーンディーゼル車にとって重要なのです。

車が止まると困るので確保しておこうかな…。

開封後の保存期間はどのくらい?
アドブルーの補充が間に合わなくて車が動かなくなるのは困りますよね。
アドブルーは会社や個人で保管することは可能ですが、開封後は長期の保存期間に向いていないため、使い切るか破棄するのがおすすめです。
そんなアドブルーの取扱いや保存期間、開封後の補充方法について説明します。
アドブルー開封後の保存期間は短い!温度管理が大事!

開封後は特に空気にさらされることによって劣化が進むので、長期の保存期間には向いていません。アドブルーの開封後は速やかに使い切るのがおすすめです。
アドブルーは熱に弱いため、製品寿命は外気温度によって大きく左右されます。
未開封の場合、アドブルーの製品寿命は次のとおりです。
外気温度 | 保存期間の目安 |
10℃以下 | 36ヵ月 |
25℃ | 18ヵ月 |
30℃ | 12ヵ月 |
35℃ | 6ヵ月 |
40℃以上 | 4ヵ月 |

温度が上がるほど劣化スピードが速まるんだね!
また、アドブルーは-11℃以下の環境に置くと結晶化してしまいますが、温度が上がって元の液体に戻れば、性能は劣化することなく使用できます。
常に30度以下の環境で保管することが、アドブルーの保存期間を長くするための条件ですよ。

未開封でも、夏場の車内に置いておくとすぐに劣化するから要注意!
アドブルーの保存期間を長くするためのポイント
アドブルーは無色・無臭・無害の安全な液体ですが、保管するには性質を持って知っておくことが大切です。
実は尿素は古くから植物を育てるための肥料や、保湿剤として化粧品にも使われているほど身近な物なのです。
特に危険物や毒劇物の指定は無く、アドブルーを扱う際に特別な資格は必要ありません。
しかし、車体にかかると腐食の原因となり、目や手足にかかった場合は素早い対処が肝心となりますので、知識を付けておくと安心かつ正しい使い方が分かりますよ!

そもそもなぜクリーンディーゼル車にはアドブルーの補充が必要なの?
劣化してしまったアドブルーを使うと排気ガスの浄化が正しく行われず、環境汚染につながりかねないので、アドブルーが不足すると道路を走行することができません。
アドブルーの必要性について説明します。
クリーンディーゼル車が排気ガスを浄化する仕組みについて
まず、ディーゼル車が排出するガスには「NOx」と「PM」という有害物質が含まれます。
これらの成分は、NOx・PM法という法律によって厳しく規制されているほどで、NOxは窒素酸化物、PMは大気汚染の元となる粒子状の物質を示します。

過去には排気ガスによる大気汚染が問題となって、規制の動きが加速したんだって。
PMは、マフラーに「微粒子捕集フィルター」と呼ばれるものを装着することで、排出される粒子状物質の量を抑えます。
NOxは、「尿素SCRシステム」と呼ばれる装置で窒素酸化物とアンモニアに化学反応を起こし、窒素酸化物を無害な水と窒素に分解します。
この尿素SCRシステムで、排気ガスに尿素水を吹きかけて活躍するのがアドブルーです!

アドブルー=尿素水なの?
いいえ。アドブルーはドイツ自動車工業会(VDA)に認証された登録商標で、尿素SCRシステム専用の「高品位尿素水」とされています。一般的な尿素水とは違います。

アドブルーのおかげで排気ガスが浄化されて、クリーンディーゼル車が道路を走れるんだね。
アドブルーが劣化してしまうと、空気中に舞う有害な物質を正しく浄化できず、NOxが分解できなくなります。
アドブルーは正しく保管して、開封後は速やかに消化するか破棄するようにしましょう。
アドブルーを長持ちさせるための保管条件
冒頭で説明した温度管理の他にも、アドブルーの保管で気を付けるべきことは以下のとおりです。
- 容器は必ず密閉する
- 直射日光を避ける
- 換気がよい場所に置く
- 外気温度が30度以下の場所
- ガソリンや軽油等の危険物と一緒に置かない
運送業の会社または自宅などで適切な保管方法が守られているかをチェックしてみてくださいね。
<容器は密閉する>
アドブルーは、尿素32.5%:純水67.5%の比率で性能が発揮できるようになっていて、水道水などが混ざると性能を十分に発揮できなくなります。
そのため、保管用のタンクはしっかりと密閉し、以前に使った別の液体が残っていない状態で使用してください。
<直射日光を避ける/換気が良い場所に置く/外気温度が30度以下の場所>
高温の環境と同様に、アドブルーに直射日光が当たると劣化が早まります。
アドブルーは、直射日光を避けた風通しの良い常温の室内(-10度~30度)で密閉して保管すると長持ちしますよ!
ちなみに、JAFが真夏の車内気温のユーザーテストを行ったところ、外気温が35度のとき、車内は1時間経たずに50度以上に達したというデータがあります。
可燃性の高い危険物と同様に、アドブルーも車内に置くのは避けたほうが良さそうです。
<ガソリンや軽油等の危険物と一緒に置かない>
アドブルーは有害性が低く、燃えにくい性質です。
しかし、周辺が火災になるなどして温度が160度以上に加熱されると、成分が分解されてアンモニアガスが発生する危険性があります。
アンモニアガスは人体に触れると損傷や熱傷を与える可能性があるので、液体の設置場所には注意が必要です。
何かあった時に大惨事にならないように、危険物の近くには置かないようにしましょう。

子供のケガと同じで、大丈夫と油断したときが怖い…!
容器も腐食やひび割れがあると漏れ出して周囲に悪影響を与えかねないので、適切な保管を心がけてくださいね。
ハイエースに必要なアドブルーの取扱いと開封後注意点

クリーンディーゼル車の中でも、商用バンとして不動の人気をほこるのが、トヨタのハイエース。
従来の商用バンでの使用以外にも、荷物がたくさん入るので、今ではキャンプやアウトドアレジャーなど個人乗用車としての使用も多くなった万能アウトドア車です。

ハイエースをキャンピングカー仕様にカスタマイズして、バンライフを満喫する人も増えているのだとか!
尿素SCRシステムは、2017年11月以降に販売されたハイエースバン等に搭載されています。そのため、ハイエースで走行するにもアドブルーは欠かせません。
安心・安全な走行を実現するために、ハイエースにおけるアドブルーの補充タイミングや特徴を知っておきましょう。
また、アドブルー開封後も性能を保つために守るべきポイントがあります。

どのくらいの頻度でアドブルーを補充したらいいの?
このような疑問を解決するために、ハイエースにおけるアドブルーの特徴を見ていきましょう!
アドブルーの消費と補充のタイミング
ハイエースは、排気ガスにアンモニアを吹きかけて有害物質を低減しますので、アドブルーは燃料と同じように消費されます。
走り方によりますが、およそ1,000km走行すると、1Lのアドブルーが消費されます。
ハイエースはアドブルーのタンク容量が7.4Lと小さめなので、満タンにしても大体7,400km前後走行すると補充が必要になってきます。

アドブルーの燃費効率は車種や乗り方によって変わります。また、タンクの容量もメーカーごとに異なりますよ。
アドブルーの補充タイミングを知らせる警告メッセージ
ハイエースでは、残りの走行可能距離が3,000km以下になると、メーター内にメッセージが表示されます。
さらに残りの走行可能距離が2,000kmを下回ると、AdBlueの警告灯と警告メッセージが表示されます。

警告が出ると、エンジンをかける度に残り走行可能距離を教えてくれるよ。
基本的に、警告灯が点灯したら5L補充を考えるのが良いでしょう。
アドブルーを予備用として置くなら、開封後は長持ちしないと考えて使い切りの5L単位で買っておくのがおすすめですよ。
アドブルーが無くなったらエンジンが止まる
アドブルーが空っぽの状態になると、エンジンの始動ができなくなります。
ただし、空っぽになった状態でもエンジンを停止しない限りは走行可能です。
もしもアドブルーが空になってしまったら、エンジンを切らずに近くのディーラーやアドブルーを取扱っているガソリンスタンドに行って補充しましょう。
アドブルーの補充は、警告メッセージが表示されてからでも遅くはないけれど、空っぽになる前にやっておくと良いですよ!

私は過去にガソリンが少ない状態で寒い山道を走ったことがあり、次のガソリンスタンドまで辿り着けるか不安でした…!
ギリギリになるよりも、少しでも余裕を持って補充しておくと安心ですね。
アドブルー開封後に補充するときの注意点
尿素水を安全に取り扱うために、以下の注意点は頭に入れておきましょう。
- 製品本来の性能を発揮するため、異物を混入させたり水で薄めたりしない
- 人体や車にかけないようにする
アドブルーは高純度の製品なので、不純物が混入することは避けましょう。
アドブルーは無害な液体ではありますが、もし開封後に手足などにかかってしまったら、多量の水でしっかりと洗い流してください。
目に入ってしまった場合は、15分間以上水で洗い流します。

万が一に備えて、防護メガネや不浸透製のゴム・樹脂製手袋を着用しておくと安全だよ。
また、アドブルーは鉄や銅、アルミを腐食させる性質があるので、もし車体にかかってしまったらすぐに布で拭き取り、水で尿素水を洗い流しましょう。
作業するときに特別な設備は必要ありませんが、近くに手洗い場所があるところを選び、保護具を活用するなどして身体に尿素水が触れないように注意してください。
アドブルー開封後の補充方法は?プロに任せれば安心!

アドブルーの補充はディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドなどにいる専門のスタッフに依頼するのが一番安心ですよ!
ハイエースのようにタンク容量が少ないと、アドブルーの補充頻度は早ければ数ヵ月単位になるでしょう。
アドブルーが無害とはいえ、保管や開封後の取扱いには細心の注意を払う必要があります。
自分でアドブルーを補充する場合、保管方法と開封後の人体や車体に対する影響に十分に注意を払う必要がありますので、緊急時の対応に留めておくのがおすすめです。

保管方法を間違えるとアドブルーが劣化して使えなくなるから要注意!
おおよそですが、自分で5Lのアドブルーを補充する場合は710円以上、店舗に依頼すると1,500円以上かかると思われます。
店舗に依頼すると費用は倍になりますが、保管リスクや漏れた時のトラブルは避けられて安心ですよ。
ちなみに、自分でアドブルーを補充する方法は、こぼれないように気を付ければ難しいことではありません。
緊急時に対応!自分でアドブルーを補充する方法
アドブルーの補充作業は、ご自身の責任において行ってください。
アドブルーを補充するタイミングは、補充の警告メッセージが表示されてからで問題ありません。
ハイエースの場合、走行可能距離が2,000kmのときはおよそ2Lの残量となりますので、5Lの補充が適量といえます。
- アドブルー
- 保護具(防護メガネ、皮膚に触れないためのゴム手袋など)
念のため、車体にアドブルーがかからないようにタオルを用意しておくのも良いでしょう。
- 車を安全な場所に停車して、エンジンを切る
- ボンネットを開けて、青いAdBlueの補充口キャップを開ける
- アドブルーを補充する
- キャップが「カチッ」となるまで締めて補充を完了する
アドブルーの開封後は長く保存できないので、できれば使い切ることがベストです。
もしも残ってしまったら、残液と空容器は産業廃棄物処理業者に委託し、適切な処理をしてください。
最近では、ディーラーはもちろん、カー用品店や一部のガソリンスタンドでアドブルーが購入できます。
ネットショップでも販売していますが、使い切れる5Lで買うのがおすすめですよ。

いざという時のために、日頃からアドブルーを取扱っている店舗を確認しておくと安心だね。
アドブルーの補充方法は簡単ですが、車体のサビや人体に触れたときの危険性を考えると、できる限り店舗へ依頼するのがベストです!
まとめ

- アドブルーの開封後は長期の保存期間に向いていないため、開封後は使い切るか破棄するのがおすすめ
- 常に30度以下の環境で保管することが、アドブルーの保存期間を長くするための条件
- アドブルーは無色・無臭・無害の安全な液体ですが、保管するには性質を持って知っておくことが大切
- ハイエースはクリーンディーゼル車の中でも人気で、定期的にアドブルーの補充も必要
- アドブルーの保管や開封後の補充はプロに任せるのが安心
クリーンディーゼル車にとって、排気ガスを浄化するのに欠かせないアドブルー。
自分で補充すると経済的にお得で、何かあったときに家に予備があれば安心ですよね。
ただ、開封後の保存期間は短いので、使い切れる量だけ置いておくのがおすすめです。
間違った環境に置いておくと危険な液体ではあるので、取扱いに注意しながらバンライフを楽しみましょう!